
ユーザーがどんな気持ちでサービスに出会い、どんな流れで行動するのか。
その「体験の物語」を描くのが、ユーザーシナリオです。
この記事では、基本の考え方から書き方、実践での使い方まで解説します。
ユーザーシナリオとは、特定のユーザー像(ペルソナ)が、ある課題や目的を持ってサービスに出会い、体験し、目的を達成するまでのストーリーを文章で描いたものです。
目的は次の通りです。
体験全体の流れを可視化し、UXを俯瞰する。
ユーザーの「背景・文脈・気持ち」を理解する。
課題や離脱ポイントを特定し、改善策を導く。
チームで「共通の物語」を持ち、認識を揃える。
「ユーザーの行動」だけでなく、「その裏にある思考・感情・動機」を含めて描くことで、体験の本質を掘り下げます。つまり、ユーザーが“なぜそう動くのか”を可視化するツールです。
複数の知見を整理すると、以下の効果が共通して語られています。
体験を俯瞰できる
断片的なタスクではなく、「出会いから目的達成まで」をひとつの流れで捉えられる。
ユーザーの文脈が見える
数値だけでは見えない“なぜそう思うか”の背景を共有できる。
課題発見が容易になる
ユーザーの思考と実際の行動を並べることで、ギャップ(離脱原因)が浮かび上がる。
チームの共通言語になる
開発・デザイン・マーケティング間で認識を合わせやすい。
混同されやすい用語を整理します。
用語 | 定義 | 主な違い |
|---|---|---|
ユーザーシナリオ | ペルソナの行動と感情をストーリーとして描く | 体験を“物語”で理解する |
カスタマージャーニーマップ | 行動・感情・タッチポイントを時系列で図にまとめる | “全体構造”を俯瞰するツール |
ユーザーストーリー | 「○○として△△をすることで□□を達成したい」形式の要件整理 | 開発寄り・機能中心 |
ユースケース | システムとユーザーのやり取りを図式化 | 操作単位・機能単位での分析 |
シナリオは“感情を含んだ体験設計”、ストーリーやユースケースは“機能や要件設計”と捉えると分かりやすいでしょう。
まずは土台となる3つを定義します。
ペルソナを明確にする
年齢・職業・ライフスタイル・価値観・課題などを具体化します。
※1人ではなく、主要なタイプごとに複数設定するのも有効。
スタートとゴールを決める
どの場面から体験を描くのか(例:広告クリック直後/初回訪問)
どんな状態をゴールとするのか(例:資料請求完了/購入完了/継続利用)
タッチポイントを洗い出す
サイト、SNS、メール、店舗など、ユーザーが接触する全チャネルを列挙。
以下の流れで作成します。サンプルを括弧内に示します。
行動プロセスを洗い出す(As-Is)
例:認知(広告を見る) → 検索(比較する) → 詳細閲覧(口コミ確認) → 決定(カート投入) → 購入 → 共有(レビュー)
各プロセスの具体的なアクションを記載
例:ブランド名で検索/価格.comで比較/公式サイトでプラン表を見る/FAQを読む
その時の思考・感情を想定する
例:「プランが多くて違いが分からない」「他社より高いけどサポートは手厚そう」
課題を抽出する
例:比較指標がバラバラ/料金表示が分かりづらい/FAQが探しにくい
改善案を出す(To-Beシナリオ)
例:比較表の標準化、絞り込み条件の明確化、料金の総額表示、FAQ検索導線の強化、CTAの文言改善
図式化または文章化
テキスト(シナリオ)+図(ジャーニーマップ)を併用すると共有しやすい。
例として「ホテル予約サイトの改善」を考えます。
ペルソナ:30代夫婦旅行、ネット予約が主流、口コミ重視
スタート:Google検索から訪問
ゴール:宿泊予約完了(できれば会員登録・次回利用の兆しまで)
As-Is
プランが多すぎて比較しづらい
総額が最終画面まで分からず不安
口コミが外部サイトに分散し、離脱が増える
To-Be
「条件→結果→比較→決定」が一直線になるUI
税サ込の総額を早い段階で提示
口コミの要点を要約して同一画面で比較
予約完了後に「次回5%OFF」などの軽いリテンション導線
結果、一覧→詳細→予約の感情の落ち込みが減り、予約率・滞在時間が改善する設計が描けます。
カスタマージャーニー(Customer Journey)は、ユーザーが認知から購入・利用・共有までたどる道筋を時系列で整理したもの。
これを図式化したものが「カスタマージャーニーマップ」です。
ユーザー目線で全体を把握できる
各接点の感情や課題を明確化できる
部門横断で共通認識が作れる
施策とKPIの優先順位が見える
ペルソナを設定する
ゴールを明確にする(例:契約、再購入)
行動フェーズを分ける
認知 → 興味 → 検討 → 購入 → 利用 → 継続・共有
タッチポイントを洗い出す
行動・思考・感情を各フェーズに整理する
課題・施策・KPIを紐づける
定期的に更新する(チャネルや期待は変化する)
注意点:
企業都合のペルソナを作らない
UXデザイナー任せにしない(CS・マーケ・開発で一緒に作る)
“完成品”ではなく“進化するマップ”として扱う
観点 | ユーザーシナリオ | カスタマージャーニー |
|---|---|---|
形式 | 文章 | 図・マップ |
視点 | 個人(ペルソナ) | フェーズ全体 |
目的 | 感情の理解・深掘り | 行動と接点の整理 |
活用場面 | UX設計・プロトタイプ | マーケ全体設計・部門連携 |
併用が最も効果的。
数字と感情、俯瞰と没入の両面からユーザーを理解できます。
「リテンション」とは、ユーザーを“離脱させずに継続利用してもらうこと”。
リテンションシナリオは、ユーザーが使い続ける・戻ってくる仕組みを意図的に設計する流れです。
代表的なフェーズ:
初回体験(Onboarding):最初の3タップで価値が伝わるか
定着期(習慣化):週1→週2→週3の利用を橋渡しできるか
維持期(ロイヤル化):パーソナライズで“私のため”を実感できるか
推奨期(ファン化):紹介・レビューが自然に生まれる導線があるか
MA(マーケティングオートメーション)やWeb接客ツールを使うと、シナリオをリアルタイムに実行できます。
たとえば:
行動データから離脱兆候を検知し、最適なタイミングでポップアップを表示
一度離れたユーザーに、再訪を促すリマインドメール/プッシュ通知
利用履歴から、関心の高いコンテンツやプランをレコメンド
A/Bテストやヒートマップで、ボトルネックに施策を打ち続ける
ポイントは「描いて終わり」にしないこと。
“シナリオ設計+行動データ+施策運用”をひとつのループとして回すことで、UX改善が継続運用に変わります。
UXデザインやマーケティングにおける最大の課題は、「体験設計が属人化しやすい」こと。
FAKEでは、シナリオ設計を単なるドキュメントではなく、チームの共通言語/思考ツールとして根付かせることが重要です。
シナリオを「読む資料」ではなく「話し合うツール」にする
各部署が同じペルソナ・タッチポイントを共有する
定期的にシナリオを見直し、更新を前提に運用する
ユーザーシナリオ:行動と感情の流れをストーリーで掘る
カスタマージャーニー:接点と体験全体を俯瞰で捉える
リテンションシナリオ:継続と再利用を設計する
さらに、ヒートマップ・行動分析・アンケートなどのツールで定量データを重ね、仮説を検証する。
この仮説→実装→検証→学習の循環が、「使えるUX設計」をつくります。
既存サービスのペルソナを再定義
誰に向けた体験かを明確に。
1本のユーザーシナリオを書く
行動・感情・課題・改善の流れをストーリー化。
カスタマージャーニーマップで構造を整理
フェーズ・タッチポイント・課題を図式化。
リテンション設計を追加
購入後・利用後の継続シナリオを描く。
ヒートマップで検証・アップデート
感情の落ち込みと行動データを照らし合わせ、次の改善へ。
「シナリオを描く」とは、単にUXを整える作業ではなく、ユーザーの心に共に寄り添い、感情の起伏を理解し、“その人の物語”を一緒に設計することです。
数字だけを追いかけるマーケティングでは見えない、行動の裏にある理由——「なぜその瞬間に動いたのか」「なぜそのページで離れたのか」。
その一つひとつを丁寧に紐解くことが、より深いブランド体験の第一歩になります。
FAKEでは、UXを“デザインの一部”ではなく“事業の核心”として捉えています。
ユーザーの感情を軸にした設計を続けることで、サービスは自然と“選ばれ続ける存在”へと育っていく。
その始まりこそが、一枚のシナリオを書くことなのです。
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会社概要
社名
株式会社FAKE
住所
〒150-6090 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-4 Portal Ebisu H1
代表取締役
高橋 才将
設立
2020年1月
事業
DXコンサル、新規事業コンサル、システム開発、UIUXデザイン