arrow_back

BLOG

自治体システム標準化とは?対象20業務・期限・課題と対応策を解説

  • 業務システム

  • システム開発

  • UIUX

作成日 :

2026/10/15 21:30

更新日 :

2026/10/10 04:55

2026年6月、デジタル庁の公表をもとに、全国1,015の自治体が2025年度末の移行期限に間に合わなかったと報じられました。全自治体の半数を超える数字です。住民記録や税、福祉といった基幹業務のシステムを国の標準仕様にそろえる自治体システム標準化は、期限を過ぎたいまも現在進行形の大型プロジェクトです。この記事では、自治体システム標準化の仕組みと対象業務、ガバメントクラウドとの関係、移行状況と課題、そして自治体と事業者がこれから取り組むべきことを順に解説します。

この記事を読むと理解できること

  • 自治体システム標準化の定義と、根拠となる標準化法の位置づけ

  • 標準化の対象となる20業務と、標準仕様書を所管する省庁

  • 自治体システム標準化が進められている背景と目的

  • 自治体システム標準化とガバメントクラウドの関係

  • 2026年時点の移行状況と特定移行支援システムの扱い

  • コスト、ベンダー、人材といった自治体システム標準化の課題

  • 自治体と事業者がそれぞれやるべきことと、業務改善やUI改善につなげる視点

自治体システム標準化とは何か

自治体システム標準化とは、全国の地方公共団体が個別に調達・運用してきた基幹業務システムを、国が定める標準仕様に準拠したシステムへ移行する取り組みです。正式には地方公共団体情報システムの標準化と呼ばれ、総務省とデジタル庁が中心となって進めています。

これまで自治体の基幹システムは、同じ住民基本台帳や個人住民税の業務であっても、自治体ごとに機能や画面、帳票、データの持ち方が異なっていました。自治体システム標準化は、この違いを国の基準のもとでそろえ、全国どこでも同じ仕様のシステムで業務を回せる状態を目指すものです。

標準化法と標準準拠システム

根拠となる法律は、2021年に成立し同年9月に施行された地方公共団体情報システムの標準化に関する法律、いわゆる標準化法です。標準化法では、対象となる事務について、自治体は国が定める標準化基準に適合したシステム、つまり標準準拠システムを利用しなければならないとされています。

ポイントは、標準化が努力目標ではなく法律上の義務である点です。対象業務については、自治体の判断で独自仕様のシステムを使い続けることは原則としてできません。

基本方針と国の役割分担

標準化の進め方は、2022年10月に閣議決定された地方公共団体情報システム標準化基本方針で示され、2024年12月に改定されました。デジタル庁が基本方針の策定と全体の推進を担い、各業務を所管する府省が業務ごとの標準仕様を作る、という役割分担になっています。

総務省は自治体への助言や財政支援を担い、移行にかかる経費は国の基金から補助されます。国が仕様と資金の両面で枠組みを用意し、自治体と事業者が実際の移行を進める構図です。

自治体システム標準化の対象20業務と標準仕様書

自治体システム標準化の対象となるのは、住民の生活に直結する20の基幹業務です。分野ごとに整理すると次のとおりです。

分野

対象業務

住民記録関連

住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理

税関連

固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税

福祉・保険関連

国民健康保険、国民年金、介護保険、後期高齢者医療、障害者福祉、生活保護、健康管理

子ども・教育関連

児童手当、児童扶養手当、子ども・子育て支援、就学

いずれも全国の自治体が共通して担い、法令にもとづいて処理の内容がほぼ決まっている業務です。だからこそ自治体ごとに異なるシステムを持つ必然性が薄く、標準化の効果が出やすい領域として選ばれています。

標準仕様書は業務ごとに所管省庁が作る

標準準拠システムが満たすべき機能や帳票は、業務ごとの標準仕様書に定められています。標準仕様書は2022年度末までに各制度所管省庁が策定し、所管は総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、こども家庭庁に分かれています。

標準仕様書には、システムが必ず備える機能、実装してもしなくてもよい機能、実装してはいけない機能といった区分が示されています。仕様書は制度改正などに合わせて改定されるため、調達や改修の際には、どの版の仕様書にもとづいているかを確認しておくことが欠かせません。

業務をまたぐ共通の基準

業務ごとの機能要件に加えて、データの項目や形式、システム間の連携方式、セキュリティなどの非機能要件といった、業務をまたぐ共通の基準も定められています。データの持ち方と受け渡し方がそろうことで、ある事業者のシステムから別の事業者のシステムへ乗り換える際の移行負担を減らせるようになります。

自治体システム標準化が求められる背景と目的

自治体システム標準化が国の重点施策になった背景には、自治体ごとに作り込まれたシステムが、行政サービスの改善を妨げてきたという問題意識があります。

背景にある個別最適の弊害

従来の自治体システムは、各自治体の業務手順や独自施策に合わせて細かくカスタマイズされてきました。その結果、制度改正のたびに全国の自治体がそれぞれ改修費を負担し、同じような改修が何百回も繰り返される構造になっていました。

特定の事業者の独自仕様に依存し、他社製品へ乗り換えにくいベンダーロックインも問題とされてきました。新型コロナウイルス対応の給付金では、自治体ごとのシステムの違いが迅速な事務処理の足かせになったことも、標準化を後押ししたと言われています。

自治体システム標準化が目指すもの

自治体システム標準化の目的は、大きく次の4つに整理できます。

目的

内容

運用経費の削減

移行完了後に、標準化対象事務の運用経費を2018年度比で少なくとも3割削減することを目指す

ベンダーロックインの解消

仕様とデータ形式をそろえ、事業者を乗り換えやすくする

データ連携の円滑化

部署間や自治体間、国とのデータ連携をしやすくする

住民サービスの向上

制度改正への迅速な対応や、オンライン手続きの基盤を整える

政府は、デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップというデジタル3原則に沿った行政サービスの実現を掲げています。自治体システム標準化は、その土台となる基幹システムを全国でそろえるための施策だと捉えると、位置づけが分かりやすくなります。

自治体システム標準化とガバメントクラウドの関係

自治体システム標準化とセットで語られるのが、デジタル庁が整備するガバメントクラウドです。両者の関係は、アプリケーションと基盤に分けて考えると整理しやすくなります。

標準準拠システムを動かす共通基盤

自治体システム標準化がそろえるのは、業務アプリケーションの仕様です。一方のガバメントクラウドは、デジタル庁がクラウド事業者と契約して一括で調達し、府省や自治体に提供するクラウドの利用環境です。

標準準拠システムは、このガバメントクラウド上で動かすことが想定されています。仕様のそろったアプリを、セキュリティ要件を満たした共通の基盤に載せることで、行政システム全体の品質とコストを底上げしようという考え方です。

標準化は義務、クラウド利用は努力義務

注意したいのは、法律上の扱いが異なる点です。標準準拠システムへの移行は標準化法で義務とされていますが、ガバメントクラウドの利用は努力義務と位置づけられています。

そのため、標準化の対象外となる独自システムまで、すべてをガバメントクラウドへ移す必要はありません。どのシステムをどの基盤で動かすかは、費用やセキュリティ、事業継続の要件を踏まえて自治体ごとに判断することになります。

観点

自治体システム標準化

ガバメントクラウド

そろえる対象

業務アプリケーションの機能とデータ

システムを動かすクラウド基盤

主な推進主体

デジタル庁と各制度所管省庁

デジタル庁

法律上の扱い

標準化法にもとづく義務

努力義務

自治体システム標準化の期限と移行状況

自治体システム標準化は、原則として2025年度末までに標準準拠システムへ移行することを目標に進められてきました。しかし2026年時点で、全国の移行は完了していません。

特定移行支援システムという扱い

2024年12月の基本方針改定では、期限内の移行が極めて難しいシステムを特定移行支援システムとして扱い、2026年度以降の移行を国が支援する枠組みが整えられました。政府は、これらのシステムが概ね5年以内に標準準拠システムへ移行できるよう支援するとしています。

特定移行支援システムに該当する主な理由は、メインフレームで運用されている、個別開発のシステムである、現行事業者が標準準拠システムを提供せず代替の事業者が見つからない、事業者のリソースがひっ迫しているといったものです。移行の期限は自治体単位で一律に決まるのではなく、システムごとに個別に設定されます。

2026年時点の移行状況

デジタル庁が2026年6月に更新した資料によると、2026年3月末時点で、移行対象34,366システムのうち10,013システム、割合にして29.1パーセントが特定移行支援システムとなりました。おおよそ3システムに1つが、当初の期限内に移行を終えられなかった計算です。

自治体の単位で見ると、2025年度末の期限に間に合わなかった自治体は1,015団体で、全自治体の56.8パーセントにのぼると報じられています。遅れの主な要因として、システム改修を担うエンジニアの全国的な不足が挙げられています。

時点

状況

2022年10月

基本方針を閣議決定。原則2025年度末までの移行を目標に

2024年12月

基本方針を改定。特定移行支援システムの枠組みを整備

2026年3月末

34,366システム中10,013システムが特定移行支援システムに

2026年度以降

特定移行支援システムは概ね5年以内の移行を国が支援

期限を過ぎたからといって、自治体システム標準化への対応が不要になるわけではありません。特定移行支援システムを抱える自治体は、個別に定められた期限に向けて移行計画を組み直す段階に入っています。

自治体システム標準化の課題

自治体システム標準化は、全国の自治体と事業者が同時期に動く前例のない規模の移行です。そのため、いくつかの構造的な課題が表面化しています。

運用経費が想定どおり下がらない

政府は運用経費3割削減を目標に掲げていますが、移行しただけで費用が下がるとは限りません。ガバメントクラウドへ先行して移行した10団体を対象としたデジタル庁の検証では、合計の運用経費が8.0パーセント増えたと報告されています。

クラウドへ接続する回線費用や、非機能要件の水準がそろって高くなったことが増加要因として指摘されています。移行期間中は旧システムと新システムの費用が重なる二重コストも生じます。デジタル庁は2025年6月に運用経費に関する総合的な対策をとりまとめており、自治体側にもクラウドの使い方を見直す取り組みが求められています。

ベンダーのリソース不足と撤退

全国の自治体がほぼ同じ時期に移行するため、標準準拠システムを提供する事業者の開発・移行リソースがひっ迫しました。現行の事業者が標準準拠システムを提供しない、あるいは事業から撤退するケースでは、自治体は代わりの製品と事業者を探すところから始めなければなりません。

移行作業が特定の時期に集中したことで、事業者側の要員計画が組み直され、移行スケジュールが大きく後ろ倒しになった例も少なくありません。

自治体側の人材と体制

自治体の情報政策部門は、多くの場合少人数で運営されています。標準化では、現行業務と標準仕様の差を洗い出し、業務の変え方を決め、データ移行を検証するといった作業が、業務所管課を巻き込んで発生します。

システムの知識と業務の知識の両方を持つ人材が不足していると、事業者からの提案を評価したり、仕様の判断を下したりすることが難しくなります。

独自施策と標準化対象外システムとの連携

自治体システム標準化では、標準仕様にない機能をパッケージに追加するカスタマイズは原則として認められていません。条例にもとづく独自の給付や助成など、標準仕様でまかなえない業務は、標準準拠システムとは別のシステムで扱う必要があります。

財務会計や文書管理など、もともと標準化の対象外であるシステムとの連携も改修の対象になります。こうした周辺システムの改修費は見落とされやすく、予算計画の段階で漏れがないかを確認しておくことが重要です。

自治体システム標準化で自治体と事業者がやるべきこと

自治体システム標準化を期限内に、かつ効果のある形で終えるために、自治体と事業者はそれぞれ何をすべきでしょうか。ここでは実務の観点から整理します。

自治体がやるべきこと

最初に取り組むべきは、現行業務とシステムの棚卸しです。業務フロー、カスタマイズの状況、帳票、他システムとの連携を洗い出し、標準仕様との違いを一覧にします。

そのうえで、標準仕様に業務を合わせるFit to Standardの考え方で、違いを一つずつ判断していきます。標準機能で代替できる手順、運用の工夫でカバーする手順、廃止できる慣行を切り分け、法令や条例にもとづく独自施策だけを別のシステムに切り出すのが基本です。

データ移行の計画も早めに立てる必要があります。現行データの品質を確認し、移行のルールと検証の基準を決め、過去データをどこまで移すかを判断しておくと、切り替え直前の混乱を減らせます。

体制面では、情報政策部門だけで抱え込まず、業務所管課の職員を巻き込むことが重要です。帳票や画面、業務手順が変わることは窓口の職員や住民にも影響するため、研修や住民への周知も計画に組み込みます。

事業者がやるべきこと

標準準拠システムを提供する事業者には、最新の標準仕様書への確実な準拠と、仕様改定に追随できる開発体制が求められます。移行時には、自治体ごとの現行データを標準のデータ形式へ変換し、正しく移行できたことを示す検証の仕組みを用意することも欠かせません。

周辺システムを提供する事業者にとっても、自治体システム標準化は無関係ではありません。標準準拠システムとの連携方式に合わせた改修や、独自施策を担う新たなシステムの開発ニーズが生まれています。

主体

主な取り組み

自治体

業務とシステムの棚卸し、Fit to Standardでの判断、独自施策の切り分け、データ移行計画、庁内体制と住民周知

標準準拠システムの事業者

標準仕様書への準拠と改定への追随、データ変換と移行検証、移行スケジュールの管理

周辺システムの事業者

標準準拠システムとの連携改修、独自施策システムの開発、操作性の改善

自治体システム標準化を業務改善とUI改善につなげる視点

自治体システム標準化は、システムの入れ替えとして進めると、仕様に合わせるための負担だけが残りがちです。しかし見方を変えれば、長年積み重なった業務のやり方を見直す数少ない機会でもあります。

システムに業務を合わせる発想への転換

カスタマイズを前提としない標準準拠システムでは、業務をシステムに合わせることが前提になります。これは現場にとって負担である一方、慣行として続いてきた手順や、目的が曖昧になった帳票を見直すきっかけになります。

どこまでを標準に寄せ、どこを周辺システムで補うかを判断する際には、基幹システムと業務システムの役割の違いを押さえておくと整理しやすくなります。考え方は業務システムと基幹システムの違いで解説しています。

標準化しても残る使いにくさに目を向ける

標準仕様は主に機能やデータをそろえるものであり、画面の分かりやすさや入力のしやすさまで自動的に良くなるわけではありません。窓口での入力ミスや、新しい操作を覚えるまでの研修負担は、移行後も現場の課題として残ります。

特に独自施策を担うシステムや、住民向けのオンライン申請画面は、自治体や事業者がUIを設計できる領域です。職員がどの順番で情報を確認し、どこで迷っているかを観察して画面を設計すると、同じ機能でも業務の負担は大きく変わります。社内向けシステムの使いやすさを高める考え方は、社内システムのユーザビリティ改善が参考になります。

移行後も段階的に改善を続ける

自治体システム標準化は、移行が完了した時点で終わりではありません。運用経費の削減目標に近づくには、クラウドの使い方や周辺システムとの連携を見直し、段階的に改善を重ねていく必要があります。

大きなシステムを一度に作り替えるより、優先度の高い領域から段階的に刷新する方がリスクを抑えられます。進め方の考え方は基幹システムリニューアルのポイントで紹介しています。周辺システムの開発や業務改善を外部と進める場合は、業務システムDXに強い開発会社の比較記事で、パートナー選びの観点を確認できます。

まとめ

自治体システム標準化は、標準化法にもとづき、住民記録や税、福祉、子ども関連など20の基幹業務のシステムを、国の標準仕様に準拠したシステムへ移行する取り組みです。仕様は業務ごとに所管省庁が標準仕様書として定め、標準準拠システムを動かす基盤としてガバメントクラウドが用意されています。

当初の目標は2025年度末でしたが、2026年3月末時点で対象システムの29.1パーセントが特定移行支援システムとなり、期限に間に合わなかった自治体は半数を超えました。運用経費の増加、ベンダーのリソース不足、自治体側の人材不足、独自施策や周辺システムとの連携が主な課題です。

自治体システム標準化を単なる載せ替えで終わらせないためには、業務の棚卸しとFit to Standardでの判断、独自施策の切り分け、データ移行の計画を着実に進めることが欠かせません。そのうえで、標準化を業務の見直しや画面の使いやすさの改善につなげていくことが、職員と住民の双方にとっての成果につながります。

自治体システム標準化に関するよくある質問

自治体システム標準化の対象になるのはどの業務ですか

住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、国民健康保険、国民年金、介護保険、後期高齢者医療、障害者福祉、生活保護、健康管理、児童手当、児童扶養手当、子ども・子育て支援、就学の20業務です。これらは標準化法にもとづき、標準準拠システムの利用が義務とされています。

2025年度末の期限に間に合わなかった場合はどうなりますか

期限内の移行が難しいと具体化したシステムは特定移行支援システムとして扱われ、システムごとに個別の期限が設定されます。政府は概ね5年以内の移行を支援するとしています。期限を過ぎても標準化への対応が免除されるわけではないため、移行計画を組み直して進める必要があります。

自治体システム標準化ではカスタマイズはできないのですか

標準準拠システムに対して、標準仕様にない機能を追加するカスタマイズは原則として認められていません。条例にもとづく独自施策など、標準仕様でまかなえない業務は、標準準拠システムとは別のシステムで扱い、決められた方式で連携させる形になります。

標準準拠システムはガバメントクラウドで動かさなければいけませんか

ガバメントクラウドの利用は、標準化法上の努力義務です。標準準拠システムの基盤として想定されていますが、法律で一律に義務づけられているわけではありません。費用やセキュリティ、事業継続の要件を踏まえて、自治体ごとに判断することになります。

arrow_back

BLOG

自治体システム標準化とは?対象20業務・期限・課題と対応策を解説

作成日 :

2026/10/15 21:30

更新日 :

2026/10/10 04:55

Blog

|

ブログ

Works

|

お問い合わせ

Contact

|

お問い合わせ

プライバシーポリシーに同意して送信

Company

|

会社概要

社名

株式会社FAKE

住所

〒150-6090 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-4 Portal Ebisu H1

代表取締役

高橋 才将

設立

2020年1月

事業

DXコンサル、新規事業コンサル、システム開発、UIUXデザイン