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ユニバーサルデザインとFDE|現場で使われる状態まで届ける設計

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作成日 :

2026/9/17 01:16

更新日 :

2026/9/16 01:21

はじめから多くの人が使える形で作る。ユニバーサルデザインの中心にあるこの考え方は、業務システムやAIツールの世界では驚くほど実現できていません。全社に配ったはずのツールが一部の人にしか使われず、現場は紙とExcelに戻っていく。

この記事では、その断絶を埋める役割としてFDEを取り上げます。FDEはForward Deployed Engineerの略で、顧客の現場に入り込んで実装まで届かせるエンジニアを指します。ユニバーサルデザインの7原則をFDEの仕事の原則に翻訳し、汎用の設計と現場最適化のトレードオフをどう扱うかまでを整理していきます。

この記事を読むと理解できること

  • ユニバーサルデザインの発想が業務システムやAIツールで実現しにくい構造的な理由

  • FDEという職種が何をする役割で、従来のSIerやSESと何が違うのか

  • ユニバーサルデザインの7原則をFDEの仕事の進め方に翻訳した形

  • 汎用的な設計と現場ごとの最適化のトレードオフをFDEがどう解くか

  • FDEがユニバーサルデザインを現場に持ち込むときの具体的な進め方

  • 取り組みの成果を判断するために置くべき指標

ユニバーサルデザインがFDEの現場で必要になる理由

ユニバーサルデザインは1985年に米国で提唱された考え方で、提唱者はノースカロライナ州立大学の教授で建築家のロナルド・メイスです。後から特別な対応を足すのではなく、はじめから多くの人が使える形で作るという発想が核にあります。

この発想は日用品や公共空間では成果を上げてきました。牛乳パックの切欠き、シャンプー容器のギザギザ、券種ごとに位置の異なる紙幣の識別マーク。いずれも特別な人向けの製品ではなく、標準品そのものが誰にでも使える形になっています。

ところが企業の業務システムやAIツールでは、同じことが起きていません。導入したツールを使うのは一部の詳しい人だけで、残りは従来のやり方を続ける。結果として二重運用が発生し、投資が回収されないまま塩漬けになります。

原因は現場の能力ではなく、設計の前提にあります。業務システムは平均的な利用者を想定して設計されますが、実際の現場には熟練者と新人、日本語が第一言語でない作業者、高齢の就労者、繁忙期に片手で端末を操作する人が同居しています。平均に合わせた設計は、この幅のどこにも最適化されません。

AIツールではこの構造がさらに強く出ます。ガートナーは、生成AIプロジェクトの少なくとも30%が2025年末までにPoC段階で放棄されると予測しました。要因はデータ品質、リスク統制、コスト、ビジネス価値の不明瞭さとされています。技術ができないのではなく、現場で回る形に落ちていないという問題です。

ここに、ユニバーサルデザインとFDEが接続する余地があります。ユニバーサルデザインは誰でも使える形を目指す設計思想で、FDEはそれを現場で成立させる実行の役割です。思想だけでは現場に届かず、実行だけでは何を目指すかが定まりません。

ユニバーサルデザインの7原則をFDEの仕事の原則に翻訳する

FDEはForward Deployed Engineerの略で、名称は軍事用語の前方展開に由来します。職種として確立したのはデータ解析プラットフォーム企業のパランティア・テクノロジーズで、顧客の現場に入って観察し、その場でプロトタイプを作り、既存システムに統合し、業務に定着するまで見届ける働き方を取ります。現場で得た知見を自社の製品開発へ還流させる点も特徴です。

この働き方は、ユニバーサルデザインの7原則と正面から噛み合います。以下は7原則をFDEの仕事の原則に読み替えたものです。

  1. 公平な利用は、一部の詳しい人だけが使えるツールを作らないことを意味します。パワーユーザー向けの機能から設計を始めると、多数派が置き去りになります。

  2. 柔軟性は、業務のやり方が拠点ごとに違う前提で作ることに対応します。1つの手順を強制するのではなく、複数の入り口を許容する設計です。

  3. 単純で直感的な利用は、説明会や操作マニュアルなしで使える状態を指します。研修が必要なツールは、研修を受けた人だけのツールになります。

  4. 情報の認知しやすさは、システムの状態を現場の言葉で示すことです。処理中や失敗の表示を、業務の意味に置き換えて伝える必要があります。

  5. エラーへの許容は、誤操作とAIの誤りを前提に置くことです。取り消せること、確認を挟むこと、生成結果の根拠を示すことがここに当たります。

  6. 身体的負担の少なさは、入力の手数を減らすことに直結します。現場の担当者が1日に何回その操作をするかを数えると、削るべき箇所が見えます。

  7. 大きさと空間の確保は、利用される環境に合わせることです。手袋をしたまま、屋外の明るさで、片手で操作される可能性を前提にします。

7原則をこの形にすると、FDEが現場で何を観察すべきかが具体的になります。観察の目的は要望を集めることではなく、この7つのどこが破綻しているかを特定することです。

汎用のユニバーサルデザインと現場最適化をFDEがつなぐ

ユニバーサルデザインには、よく指摘される弱点があります。すべての人に配慮しようとすると設計が平均化し、誰にとっても及第点だが誰にとっても最適ではないものになりやすいという点です。コストが上がる、デザインの自由度が下がるという指摘も同じ根から出ています。

この弱点は、汎用製品として完結させようとするから生じます。逆にいえば、汎用の土台と現場ごとの調整を分けて持てば、トレードオフの大部分は解消できます。

FDEの働き方は、まさにこの分離を実装したものです。製品側は多くの現場に共通する8割を担い、FDEが残りの2割を現場で合わせる。そして現場で見つけた共通項を製品側へ戻していくため、汎用の土台そのものが時間とともに厚くなります。

パランティアとエアバスのSkywiseは、この構造の例として知られています。FDEが整備の現場に入り、センサーデータと紙ベースの修理記録を統合する基盤を作り、その仕組みが最終的に世界100社以上の航空会社が使うプラットフォームへ発展しました。個別最適から出発して汎用の土台が育った形です。

この分離があると、ユニバーサルデザインの投資判断も変わります。すべての現場を満たす完璧な設計を最初から作る必要がなくなり、共通部分に集中投資して、差分は伴走で埋めるという配分ができます。

役割の違いも整理しておきます。従来のSIerや受託開発は要件定義を起点に契約範囲を作り込みますが、FDEは要件が固まる前の段階から現場に入ります。客先常駐のSESとも異なり、人員を提供するのではなく成果が定着するところまでを対象にします。FDEを軸にした支援会社の選び方はAI導入に強いFDE支援会社8選|現場定着まで伴走する選び方で整理しています。

FDEがユニバーサルデザインを現場に持ち込む進め方

実際の進め方は4つの段階に分かれます。それぞれで見るべきものが違います。

第1段階は観察です。要望を聞くのではなく、実際の作業を見ます。誰が、どの端末で、どんな体勢で、1日に何回その操作をしているか。紙とExcelが残っている箇所は、そこにシステムが届いていない証拠なので、優先的に記録します。

第2段階はプロトタイプです。観察で見つけた詰まりに対して、動くものを短い周期で出します。仕様書のレビューではなく実物を触ってもらうことで、7原則のうち単純性と情報の認知しやすさの検証が同時に進みます。

第3段階は統合です。既存の基幹システムやデータ基盤とつなぎ、現場のデータで動く状態にします。ここで初めて、処理速度や例外パターンといった実運用の課題が表面化します。業務システムを現場で使われる形にする設計の考え方は業務システム開発の進め方|現場で使われる仕組みにする設計の要点で扱っています。

第4段階は定着です。導入したあと、実際に使われているかを利用ログで確認します。使われていない機能と使われていない人を特定し、その理由を現場で確かめる。ユニバーサルデザインの観点でいえば、ここが公平な利用の検証にあたります。

この4段階を通して、FDEは観察者であり実装者であり続けます。設計する人と作る人と現場の人が分かれていると、7原則のどこが破綻しているかという情報が伝言の途中で失われます。同じ人が現場から実装まで担うことが、ユニバーサルデザインを成立させるうえでの実務的な条件になります。

必要なスキルの幅も、この構造から決まります。Python、SQL、TypeScriptといった技術の土台に加えて、フルスタックでの構築経験、LLMを組み込んだシステムの実装経験、そして顧客との折衝力、業務ドメインの理解、曖昧な状況への耐性が挙げられます。技術だけでも業務理解だけでも足りない職種です。

ユニバーサルデザインとFDEの成果を測る指標

取り組みが進んでいるかどうかは、導入の有無ではなく使われ方で判断します。指標は3層に分けると扱いやすくなります。

第1層は到達の指標です。対象者のうち実際にそのツールを使った人の割合を見ます。ユニバーサルデザインが目指す公平な利用が実現しているかは、この数字に最も素直に現れます。利用率が特定の部署や年齢層に偏っていれば、設計のどこかが排除を生んでいます。

第2層は負担の指標です。1件あたりの処理時間、入力の手数、エラー発生率、問い合わせ件数。研修なしで使える状態に近づいているかは、問い合わせ件数の推移で見るのが実務的です。

第3層は代替手段の残存です。紙、Excel、個人メモといった旧来のやり方がどれだけ残っているかを数えます。ここが減らない限り、システムは現場に届いていません。二重運用の解消は、ユニバーサルデザインとFDEの取り組みで最も分かりやすい成果指標です。

この3層は、いずれも導入前に測っておく必要があります。比較対象がないと、改善したのかどうかを判断できないためです。観察の段階で現状値を取っておくことが、後の判断を支えます。

新規事業やCX改善など、対象領域ごとの進め方の違いについては新規事業開発に強いFDE支援会社8選|PoC止まりを防ぐ選び方CX改善に強いFDE支援会社8選|現場常駐でCXを変える選び方で整理しています。ユニバーサルデザインそのものの基礎的な考え方はユニバーサルデザインとは?身の回りで出会う具体例を紹介を、設計プロセスへの落とし込みはユニバーサルデザインとUX|7原則を設計プロセスに翻訳する手順をご覧ください。

まとめ

ユニバーサルデザインの発想が業務システムやAIツールで実現しにくいのは、平均的な利用者を想定した設計が、実際の現場にある幅のどこにも当たらないためでした。ガートナーが予測した生成AIプロジェクトの3割がPoCで止まるという見立ても、同じ構造から説明できます。

FDEは、この断絶を埋める役割として機能します。現場に入って観察し、短い周期でプロトタイプを出し、既存システムと統合し、定着まで見届ける。7原則をFDEの仕事の原則に翻訳すると、現場で何を観察すべきかが具体的になります。

ユニバーサルデザインの弱点とされる平均化の問題も、汎用の土台と現場ごとの調整を分けて持てば解消に向かいます。製品側が共通の8割を担い、FDEが残りを現場で合わせ、見つかった共通項を製品側へ戻す。この循環が回ると、汎用の土台自体が厚くなっていきます。

成果は導入の有無ではなく、利用率、処理時間や問い合わせ件数、紙とExcelの残存量という3層で測ります。そして現状値は導入前に取っておく。ユニバーサルデザインとFDEを組み合わせる取り組みは、この測定設計まで含めて初めて実務として成立します。

ユニバーサルデザインとFDEに関するよくある質問

FDEは従来のSIerやSESと何が違いますか

SIerや受託開発は要件定義を起点に契約範囲を作り込みますが、FDEは要件が固まる前の段階から現場に入り、観察とプロトタイプを往復しながら仕様そのものを形にしていきます。客先常駐のSESとも異なり、人員を提供する契約ではなく、成果が現場に定着するところまでを対象にする点が違いです。

ユニバーサルデザインとFDEを結びつける意味はどこにありますか

ユニバーサルデザインは誰でも使える形を目指す設計思想で、FDEはそれを現場で成立させる実行の役割だからです。思想だけでは現場に届かず、実行だけでは何を目指すのかが定まりません。7原則をFDEの観察項目に翻訳すると、現場で何を見るべきかが具体的な作業に落ちます。

ユニバーサルデザインは平均的な設計になりやすいと聞きますが対処法はありますか

汎用の土台と現場ごとの調整を分けて持つことで、この問題の大部分は解消できます。製品側が多くの現場に共通する部分を担い、FDEが残りを現場で合わせ、見つかった共通項を製品側へ戻す。パランティアとエアバスのSkywiseのように、個別最適から出発して汎用の基盤が育った例もあります。

取り組みの成果はどう判断すればよいですか

利用率、負担の指標、代替手段の残存の3層で見ます。対象者のうち実際に使った人の割合、1件あたりの処理時間や問い合わせ件数、そして紙やExcelがどれだけ残っているか。いずれも導入前に現状値を取っておかないと比較できないため、観察の段階で計測を始める必要があります。

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株式会社FAKE

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〒150-6090 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-4 Portal Ebisu H1

代表取締役

高橋 才将

設立

2020年1月

事業

DXコンサル、新規事業コンサル、システム開発、UIUXデザイン