
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速に伴い、独自のスマートフォンアプリを開発する企業が増えています。しかし、その一方で「多額の費用を投じてデザインを依頼したものの、使い勝手が悪くユーザーに定着しなかった」「開発段階になってデザインの修正が相次ぎ、予算と納期が大幅に超過した」といった失敗の声も後を絶ちません。
アプリデザインは、Webサイトのデザインとは全く異なる専門知識と設計思想を必要とします。本記事では、アプリデザイン発注において「なぜ失敗が起きるのか」という背景から、具体的な失敗事例、そして成功させるための対策までを徹底解説します。
アプリデザインの外注において、多くのプロジェクトが迷走する最大の理由は、アプリ特有の「専門性」を軽視してしまうことにあります。Webサイト制作の延長線上として捉えてしまうと、プロジェクトの初期段階からボタンの掛け違いが生じます。
アプリデザインがWebデザインと決定的に異なるのは、デバイス環境に強く依存する点です。
まず、画面サイズの制約があります。スマートフォンはPCに比べて表示領域が極端に狭いため、情報を詰め込みすぎると操作性が著しく低下します。また、iOSとAndroidという2つの主要OSが存在し、それぞれに独自のUIガイドライン(Human Interface GuidelinesとMaterial Design)が定められています。これを無視したデザインを強行すると、ユーザーが違和感を覚えるだけでなく、開発コストの増大やアプリストアの審査落ちを招くリスクがあります。
さらに、通信環境やバッテリー消費、通知機能といった「動的な要素」への配慮も欠かせません。Webのように「見せる」ことが主目的ではなく、アプリは「特定の目的を達成するための道具」としての側面が強いため、設計の難易度が格段に高いのです。
失敗のもう一つの要因は、発注側と制作側の間にある「認識のズレ」です。
発注側は「かっこいい画面を何枚か作ってほしい」と考えがちですが、質の高いアプリデザインには、目に見えない「ユーザー体験(UX)」の設計が不可欠です。どのボタンを押すとどの画面に遷移し、データが読み込まれる間はどういう表示をするのか、といった細かな仕様(インタラクション)まで詰めなければなりません。
制作側がアプリ特有の実装制約を熟知していない場合、デザイン案としては優れていても「技術的に実現不可能」あるいは「保守コストが膨大」なものが出来上がることがあります。このギャップが解消されないまま進行すると、最終的な成果物が期待から大きく外れてしまうのです。

ここでは、実際の現場で頻発している失敗事例を3つのパターンに分類してご紹介します。
最も多いのが「Webサイトのデザインができるなら、アプリも同じようにできるだろう」という誤解です。
Webサイトは主に「ページ」単位で遷移しますが、アプリは「コンポーネント」や「ステート(状態)」の遷移で構成されます。Webの手法をそのまま持ち込むと、以下のような問題が発生します。
・ボタンやリンクが小さすぎて、指でタップしにくい(ミスタッチの誘発) ・マウスオーバー(ホバー)前提の設計をしてしまい、スマホで機能しない ・ブラウザの「戻る」ボタンに頼った設計になり、アプリ内での迷子が発生する
Webと同じ感覚で情報を詰め込んだ結果、ユーザーがどこを見て何をすべきか判断できない「情報の過密状態」に陥るケースが散見されます。
「とりあえず今のアイデアを形にしてほしい」という曖昧な状態でデザインを依頼すると、ほぼ確実にプロジェクトは炎上します。
アプリには「ログイン」「会員登録」「オフライン時の挙動」「エラー画面」など、表舞台以外の画面が大量に存在します。これら機能要件が定義されていないままビジュアル制作に入ると、後から「この機能も必要だった」「この操作フローは成立しない」といった矛盾が次々と発覚します。
結果として、既に完成したデザインの大幅な作り直しが発生し、工数が倍増。さらに、場当たり的な修正を繰り返すことでデザインの一貫性が失われ、使いにくいアプリが出来上がってしまいます。
「今風のおしゃれなデザイン」を追求するあまり、本来の目的である「ユーザーの課題解決」が置き去りになるケースです。
・アニメーションが凝りすぎていて、操作のレスポンスが遅く感じる ・特殊なアイコンを使いすぎて、直感的に意味が伝わらない ・見た目の統一感を優先し、重要なアクションボタンが目立たない
アプリは日常的に繰り返し使われるものです。一度見て感銘を受ける美しさよりも、ストレスなく操作し続けられる「心地よさ」が重要です。ビジュアル優先で設計を進めた結果、ダウンロードはされたものの、数回使っただけでアンインストールされるという悲劇は少なくありません。

プロジェクトの成否は、発注前の「準備」で8割が決まると言っても過言ではありません。
「誰が」「いつ」「どこで」「どのような状況で」そのアプリを使うのか。この定義が曖昧だと、デザインの判断基準がブレてしまいます。
例えば、屋外で歩きながら使うアプリであれば、視認性の高い配色と大きなボタン、片手で操作できるレイアウトが必須です。逆に、自宅でじっくり使う教育アプリであれば、情報の密度を高めても問題ないかもしれません。
ターゲット定義が欠如していると、社内レビューの際も「なんとなくこっちの色がいい」といった担当者の好みに左右されるようになり、本来のユーザーにとって最適なデザインから遠ざかってしまいます。
納品される「デザインデータ」が、どの程度の粒度なのかを発注側と制作側で合意できていないケースも危険です。
単なる「1枚の画像(JPG等)」としてのデザイン案なのか、それとも開発者がそのまま使える「コーディング可能な設計データ(Figma等)」なのか。また、全画面のデザインを作るのか、主要画面のみで残りは開発側に委ねるのか。
この期待値がずれていると、いざ開発フェーズに移行しようとした際に「必要な情報が足りない」「エンジニアが実装できない」といったトラブルに直面し、追加費用が発生する要因となります。

プロジェクトが動き出してからも、アプリ特有の落とし穴が潜んでいます。
デザインを確認した際、発注側からの修正指示が「もっとスタイリッシュに」「使いにくい気がする」といった抽象的な表現に終始してしまうことがあります。
デザイナーはロジックに基づいて要素を配置していますが、感覚的なフィードバックを受けると、修正の方向性が定まらず、何度もリテイクを繰り返すことになります。
「40代のユーザーが屋外で使う際に、この文字サイズでは認識しづらいのではないか」「購入完了までのステップが長すぎて離脱を招くのではないか」といった、ターゲットや目的に照らし合わせた具体的なフィードバックが、質の向上には不可欠です。
iOS(iPhone)とAndroidでは、ハードウェアとしての特性もソフトウェアとしての作法も異なります。
例えば、Androidには物理的、あるいは画面内に「戻るボタン」が存在しますが、iOSにはありません。そのため、iOSアプリのデザインでは画面内に戻るためのUIを必ず配置する必要があります。
これを考慮せず、一方のOSに合わせたデザインだけで進行すると、もう一方のOS版を制作する際に画面構成が成立しなくなり、大幅な手戻りが発生します。特に「マルチプラットフォーム開発」を予定している場合は、共通化できる部分とOS固有の部分を初期段階で見極めておく必要があります。

これまでの失敗事例を踏まえ、発注側が取るべき具体的な対策を3つ提示します。
デザインに着手する前に、必ず「ユーザーの行動導線(ユーザージャーニー)」を可視化しましょう。
・ユーザーがアプリを開くきっかけは何か
・どのような順番で画面を遷移するか
・利用頻度はどの程度か(毎日使うのか、たまに使うのか)
これらを整理することで、優先すべき機能や配置すべきボタンが明確になります。Webのように「読ませる」構成ではなく、アプリとしての「操作の心地よさ」を前提とした要件定義が、プロジェクトの成功を支えます。
いきなり色や形をつけた「完成イメージ」を作るのではなく、まずは「ワイヤーフレーム(骨組み)」の段階で徹底的に議論を行うことが重要です。
情報の優先順位やボタンの配置、画面遷移のロジックをこの段階で固めておくことで、後からの大きな修正を防げます。見た目の華やかさに惑わされず、純粋に「機能として使いやすいか」を評価する時間を確保してください。
静止画のデザインだけを見て判断するのは、非常にリスクが高いです。最近では、Figmaなどのツールを用いて、実際のスマホ上でタップしたり画面を遷移させたりできる「プロトタイプ」を簡単に作成できます。
プロトタイプを実機で触ってみることで、「このボタンは指が届きにくい」「画面遷移が不自然で迷う」といった、図面だけでは気づけなかった課題が浮き彫りになります。ビジュアルを作り込む前の段階で、実際の操作感を確認するステップを必ず組み込みましょう。

最後に、ビジネスパートナーを選ぶ際の視点と、発注の心構えについてお伝えします。
デザイン会社や制作会社を選ぶ際、「Webサイトの実績が豊富だから」という理由だけで選ぶのは避けるべきです。前述した通り、アプリには特有の作法と制約があります。
過去の制作実績において、
・iOS/Android両方のガイドラインに精通しているか
・ストア公開後のユーザー評価や運用フェーズを考慮した設計をしているか
・アプリ特有のインタラクション(動き)の設計経験があるか
これらをシビアに評価してください。アプリ専門の知見を持つパートナーは、発注側が気づかないリスクを先回りして指摘してくれるはずです。
「デザインはA社、開発はB社」と完全に分離して発注する場合、特に注意が必要です。デザインが確定した後に開発会社へ持ち込むと、「このデザインは実装に莫大な工数がかかる」「OSの制約で実現できない」といった拒絶反応が起きがちです。
理想的なのは、デザイン段階からエンジニアの意見を取り入れられる体制です。デザインと実装を一体として捉え、技術的な裏付けに基づいたクリエイティブを提供できるパートナー、あるいは開発チームと密に連携できる体制を持つ企業への発注が、最終的なコストパフォーマンスを最大化します。
アプリデザイン発注における失敗の多くは、Webサイト制作の延長線上で考えてしまうこと、そしてユーザー体験(UX)の検討が不足したまま進めてしまうことに起因します。
アプリ特有の制約、デバイスの特性、そして利用者の文脈を深く理解しなければ、どんなに見た目が優れたデザインであっても、ビジネスの成果に繋がることはありません。
アプリ特有の制約を理解する
曖昧な要件で走り出さない
プロトタイプで「触り心地」を検証する
アプリの専門知識を持つパートナーを選ぶ
これらのステップを確実に踏むことで、プロジェクトのリスクを最小限に抑え、ユーザーに愛される高品質なアプリを実現することが可能になります。
株式会社FAKEでは、数多くのアプリ開発プロジェクトで培った確かな技術力とUX設計の知見を活かし、お客様のビジネスを成功へ導くパートナーとして伴走いたします。デザイン発注にお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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会社概要
社名
株式会社FAKE
住所
〒150-6090 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-4 Portal Ebisu H1
代表取締役
高橋 才将
設立
2020年1月
事業
DXコンサル、新規事業コンサル、システム開発、UIUXデザイン