
金融業界は今、大きな転換期を迎えています。長年、業界の安定を支えてきた強固な基幹システムは、DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流の中で、単なる「動くシステム」から「効率と価値を生むシステム」への進化を求められています。
本記事では、コンサルティングファームの担当者やプロジェクトの意思決定者に向けて、金融基幹システムが抱える課題と、その解決策としてのUIUXデザインの重要性について解説します。

金融機関における基幹システムとは、銀行、証券、保険などの業務において核となる処理を行うITインフラの総称です。これらは、その役割や機能によって大きく3つの領域に分類されます。
金融機関の業務を日々支えているシステムは、大きく「勘定系」「情報系」「周辺系」に分けられ、それぞれが密接に連携しながら稼働しています。
勘定系システム 銀行における預金、貸付、為替など、お金の流れを直接扱う最も重要なシステムです。1円の狂いも許されない正確性と、24時間365日の稼働を支える高い信頼性が求められます。
情報系システム 顧客の属性情報や取引履歴を蓄積し、分析を行うためのシステムです。マーケティング施策の立案や、経営判断の材料となるデータの抽出に活用されます。
周辺系(サブ)システム 勘定系や情報系を補完する形で存在し、ローン審査、外貨両替、インターネットバンキングのフロントエンドなど、特定の業務に特化した機能を持ちます。
これらのシステムが統合的に機能することで、私たちの生活に欠かせない金融インフラが成立しています。

金融システムは、他の業界のシステムと比較して極めて特殊な性質を持っています。
まず挙げられるのが、高い安全性と正確性への要求です。一度システムダウンやデータの不整合が発生すれば、社会的な混乱を招きかねないため、保守的な設計が優先されてきました。
一方で、その歴史の長さゆえの複雑化も顕著です。多くの金融機関では、数十年前から稼働しているメインフレーム(大型コンピュータ)をベースに、法改正や新サービスのリリースのたびに改修を繰り返してきました。その結果、プログラムは肥大化し、現場のオペレーションもシステム側の制約に合わせる形で複雑化しているのが実情です。
現在、多くの金融機関がシステムのレガシー化に頭を悩ませています。これは単に技術が古いという問題に留まらず、ビジネスのスピードを停滞させる大きな要因となっています。
過去数十年にわたり、金融機関は膨大なコストを投じてシステム改修を行ってきました。しかし、その多くは現行機能の維持や緊急の制度対応が目的であり、システム全体の構造を最適化する視点が欠けていたケースが少なくありません。
結果として、ブラックボックス化したコードが積み重なり、ドキュメントと実態が乖離する事態を招いています。これが、昨今のDX推進において、新しい機能を導入したくても、どこに影響が出るか分からず着手できないという足かせになっています。経済産業省が提唱する「2025年の崖」は、まさにこの金融基幹システムの老朽化問題と直結しています。

システムの裏側(バックエンド)が複雑化すれば、当然ながら表側(UI)にもその歪みが現れます。現場の行員やオペレーターが接する業務画面には、以下のような課題が散見されます。
一つの手続きを完了するために、10以上の画面を経由しなければならないといった構造的な問題。
システム上の制約により、同じ情報を何度も入力させられる、あるいはコード値を手入力する必要がある手間。
文字が細かく、どこに重要な情報があるか一目で判別できない視覚的ストレス。
これらのUIの不備は、単に使いにくいという不満に留まりません。現場スタッフの習熟に時間がかかる、あるいは精神的な疲労による入力ミスを誘発するなど、経営上のリスクとコスト増大に直結しているのです。
こうした課題を解決するため、金融業界ではモダナイゼーション(近代化)と呼ばれるシステム刷新が加速しています。
近年のトレンドは、すべての機能を一つの巨大なシステムに詰め込むのではなく、機能を切り分けて柔軟に連携させるアーキテクチャへの移行です。
特に、AWSやAzureといったクラウド基盤の採用が進んでいます。クラウド化により、拡張性やメンテナンス性が向上するだけでなく、外部サービスとのAPI連携が容易になります。
例えば、家計簿アプリや決済サービスなどのフィンテック企業と、銀行の基幹システムをセキュアにつなぐことで、これまでにない利便性の高い金融サービスを提供することが可能になります。このオープンバリューチェーンの構築こそが、現代の金融基幹システム刷新における最大のテーマと言えます。
システムが高度化・柔軟化する一方で、それを使う人の体験が置き去りにされては、DXの真の価値は享受できません。ここで重要になるのがUIUXデザインの視点です。

これまでUIUXデザインといえば、一般消費者向けのアプリやWebサイトの話だと思われがちでした。しかし、BtoBや社内向けの業務システムこそ、UX改善による投資対効果(ROI)が高い領域です。
行員やオペレーターは、一日の大半をその画面と向き合って過ごします。もし、検索にかかる時間を5秒短縮し、画面遷移を3回減らすことができれば、組織全体では年間数千時間、数万時間の削減につながります。
また、使いやすいシステムは従業員のエンゲージメント向上にも寄与します。使いにくいシステムに無理やり人間が合わせるストレスから解放されることで、スタッフはより付加価値の高い顧客対応やコンサルティングに注力できるようになります。

金融業務において、入力ミスや操作ミスは致命的です。UIUXデザインは、人間の心理や認知特性に基づき、こうしたヒューマンエラーをシステム構造で防ぐ役割を果たします。
エラーが起きてから警告するのではなく、入力中に関連情報をサジェストしたり、形式ミスをその場で指摘したりする。
ユーザーが次に何を見ればよいか、次にどのボタンを押せばよいかを、色や配置(ビジュアルヒエラルキー)によって直感的に伝える。
一度に大量の情報を提示せず、必要なタイミングで必要な情報だけを出す段階的開示の手法を用いる。
このように、優れたデザインは単なる見た目の美しさではなく、業務の安全性と正確性を担保するための論理的な仕組みなのです。
金融基幹システムの刷新は、もはや単なるITインフラの入れ替えではありません。それは、金融機関のビジネスモデルそのものを再定義し、現場の働き方をアップデートするプロセスです。
技術的なモダナイゼーション(クラウド化やAPI連携)は、土台に過ぎません。その上で、実際にシステムを操作する人間が、いかにストレスなく、ミスなく、効率的に動けるか。この人が使う体験(UX)を設計の中心に据えることこそが、金融DXを成功させるための決定的な鍵となります。
株式会社FAKEでは、金融業界特有の複雑な業務ドメインを理解した上で、技術とデザインの両輪からプロジェクトを支援しています。システム刷新のパートナーをお探しの際は、ぜひ私たちの専門性をご活用ください。
ブログ
お問い合わせ
お問い合わせ
会社概要
社名
株式会社FAKE
住所
〒150-6090 東京都渋谷区恵比寿4丁目20-4 Portal Ebisu H1
代表取締役
高橋 才将
設立
2020年1月
事業
DXコンサル、新規事業コンサル、システム開発、UIUXデザイン